ビールの科学

伊勢角屋麦酒ファンのみなさま

おはようございます。昨日から都内に出張中の鈴木成宗です。

さて、私が、伊勢角屋麦酒の社長をしながら、時折、ブルワーとしてビールを仕込んでいることをご存知の方も多いと思います。ビールのレシピを考える際に、いつも感じること、そして、社員にも伝えていることが、当たり前のことですがプロとしてビールを作らなくてはならいということです。

プロって何ですか?

プロって、お客様からお金をいただいて自分たちの商品やサービスを提供する人のことです。お客様は、数ある競合商品やサービスの中から選んでそこにお金と時間をかけてくださるわけで、それに対して最大限の努力をしていいものを提供しようとするのがプロだと思うのです。

だから、すこしとがった言い方をしてしまうと、私は、真剣に学びもせずに勘だけで作ってきたものの多くをプロの仕事しては認めない。優れた商品の多くは、必死に考え、学び、試行錯誤を繰り返した末に出来上がってきたものです。勿論、中には天才もいて一見すると突然0からⅠを生み出す人もいます。しかし、そうした人でも多くは天才特有の焦点を絞った思考を繰り返した末に、画期的な何かが出来上がってくるんですよね。かのピカソでさえ、非常に写実的な絵画を数多く書いた挙句、ゲルニカのような天才的な抽象画に行きついているわけですから。

確かに天才はいます。天才は本当に天才で、1を聞いて10を知る。私自身は天才では無いので、天才たちと話していると如何に自分が凡人かというのが良くわかります。ただ、世の中を変えるのは天才ばかりではないことも確かで、ビールの世界に限って言えば、多面的に、きちんとビールを学び、そのうえで、独創性を出せば決して天才でなくても世界を席巻するビールをつくることも可能だと私は思っています。

とかくビールは、学びやすいお酒だと思いますね。

何故ならまず発酵形態が単行複発酵という計算しやすい形で進む。そして、世界中に情報があふれている。また、原材料が世界中で流通していて品質の安定した原料が手に入れやすい。

たとえば、ワインであれば、ぶどうの品質が、畑によって、年によってバラバラであり、このぶどうの品質が、出来たワインの品質に決定的な影響を及ぼす。日本酒は並行複発酵であり、糖化と醗酵が同時並行で進むため、コントロールが経験則によるところが大きい。ウイスキーは、熟成というコントロールしにくい要素が非常に大きい。

ところがビールは計算しやすい。

理詰めでやれる。

たとえば、あるビールにボディー感をもう少し足したいと思ったとする。そうすると、ある程度勉強を重ねているブルワーなら、直ぐに麦芽の配合比率とか、糖化のプログラムとか、各酵母の資化性だとか、エステルの質を変えるための発酵温度だとかに頭が行くはず。資化性の無い糖分をどの程度残すのか?蛋白の分解はどうするか?エステルを少し増やしてみては?こうした、ことを考えて、出来たビールの中にマルトトリオースを多めに残そうとか、酵母が代謝できる以上のアミノ酸を残して旨みを出そうとか、酢酸イソアミルで複雑さを出してみようだとか、アルコール度数を0.5%あげてみようとか考えるわけですよね。

とかく計算が線型的である。単純な一次方程式の寄せ集めで結構簡単に結果が予測できる。

だからこそ、おそらくもっともAIと親和性の高いアルコール醸造業は私はビールだと思う。

 

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