伊勢角屋麦酒ブログ

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Brut IPAを仕込みました!

皆様こんにちは!

22周年イベントで1人だけ短パン

伊勢角屋麦酒 醸造・品質管理の佐々木です。

 

さて、これからの季節にぴったりの限定ビールを仕込みましたのでご報告します。

 

名前は「Magic Brut IPA」と言い、スタイルは「Brut IPA」です。

 

【Brut IPAとは?】

アメリカの西海岸のブルワリーで造られるようになった超ドライなIPAです。

糖度は0。つまり糖質ゼロのIPAです。

色合いは淡く、味わいはドライで苦味が少ない、その代わりにホップアロマが効いているビールです。ホップの効いたシャンパンのような味わいと表現されます。

もともと「BRUT」はスパークリングワインの用語で「辛口」を示します。

 

今回、Brut IPAを作るにあたりこだわった点がありますのでご紹介したいと思います。

 

(糖質をいかに減らすか)

Brut IPAの最大の特徴の一つは糖質ゼロである点です。

糖質をゼロにする為には、アルコール発酵を行う酵母に麦汁中のすべての糖を食べさせる必要があります。糖と言っても、酵母が食べることができるブドウ糖や麦芽糖だけでなく、多糖類の総称であるデキストリン等、さまざまな糖が麦汁には含まれています。

Brut IPAのポイントは、酵素の力でデキストリンをブドウ糖や麦芽糖まで完全に分解させることになります。その為、酵素の力を最大限に引き出す為に糖化温度や時間等を検討しました。検討の結果、ほとんどすべてのデキストリンをブドウ糖や麦芽糖まで分解させることができました。

できた麦汁は、すっきりとした甘味の強いものになりました。これは甘味が強くさっぱりとした特徴のブドウ糖や麦芽糖が多い証拠です。デキストリンは甘味が弱く、ボディー感を与えるのが特徴です。デキストリンは酵母が食べることができない為、発酵終了後にどれだけデキストリンが残っているかでビールのボディーが決まります。デキストリン量が多いと重たいビール、少ないと軽いビールになる傾向があります。

 

今回の仕込みでは、糖化方法を検討し、糖質(デキストリン等)の残らないボディーの軽い辛口のビールを作りました。

 

(味のバランスをどのようにとるか)

糖質(糖やデキストリン)は、甘味を呈するだけでなく、渋味や雑味を隠す効果があります。一般的にこれをマスキング効果と呼び、糖質のおかげで味のバランスをとることができます。料理に少量の砂糖を入れると味のバランスがとれるのはこのためです。

 

今回、糖質ゼロの超ドライなビールに挑戦しましたので味のバランスには苦労しました。

まず苦味が浮かない為に、ホップ添加のタイミングを遅らせる、アロマ付けに使用するホップの割合を増やす、苦味の質の良いホップであるSimcoeを使用する等、対策を行いました。苦味は程良く感じられる程度に、かわりにホップのアロマが強く感じられるように工夫を行いました。

 

また、渋味を出さない為に、一番麦汁の取り方には細心の注意を払いました。モルトの皮には渋味を呈するポリフェノールが多く含まれるからです。

 

またBrut IPAの最大の難点は、酵母の使用方法にあります。

デキストリンを分解させ、糖濃度を高める仕込み方法をとることで、

高浸透圧条件における発酵によりオフフレーバーである酢酸の生成量が増大するリスクが高まるのです。

 

この課題を解決する為、以下の方法を用いました。

  • 麦汁中の初発溶存酸素量を増やす
  • 活性の高い酵母を多量に使用する

 

これらの検討の結果、オフフレーバーのないクリーンでドライなIPAに仕上げることができました。ここでは書ききれない気を付けたポイントはおそらく100を超えると思います。

 

一見すると麦芽とホップと水しか使われていない単純そうなビールの醸造ですが、ブルワーは緻密な計算や綿密な下調べを行います。お客様の美味しいという一声や自分自身が世界一美味しいビールを飲みたいという思いで日々ビールについて勉強を続けています。

 

きっと手品(Magic)でお客様を楽しませるマジシャンもこんな苦悩があるのかしらんと勝手に妄想を膨らませ、今回のビールの名前を「Magic Brut IPA」と名付けました。リリースは5月下旬ごろです!

 

イベント等でお客様と乾杯できる日を楽しみに待っております。

 

余談ですが、これまで佐々木が仕込んだビールの名前は

  • Snow Smile IPA
  • Stay Gold IPA
  • Supernova IPA
  • Magic Brut IPA

たまたま頭文字Sシリーズでしたが、これからMシリーズになります。変な意味はないです。音楽好きの方には世代と趣味がモロバレですが、これからもどうかよろしくお願い致します。

 

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